富士山登山|高山病の対処法と予防策

いよいよ登山シーズン到来ということで富士山登山で高山病になった場合の治し方と予防策を詳しく紹介します。私は富士山登山で重度の高山病になりましたが、後述する方法を実践して克服することが出来たので、富士山登山を計画している方、登山中に高山病になってしまった方は一読してもらえればと思います。

高山病になった場合の対処法

標高2,500mを超えた辺りから、めまい・頭痛・吐き気などの症状が出てきたら高確率で高山病です。標高が上がるにつれて酸素濃度が低くなり、身体に取り込む酸素量が不足し血中酸素濃度が下がって発症します。

《軽い症状の場合》

軽い症状であれば長めの休憩をとり、水分補給と深呼吸をしながら身体を休ませることで高度順応(低い酸素濃度に身体を適応させること)し、次第に症状も良くなっていきます。高度を上げて症状が出たら休む、良くなったら行動する、を繰り返しましょう。頭痛薬や酔い止めの服用は一時的に症状を抑えるだけで高山病を治す効果は一切無く、効果が切れた途端に重度の症状が出る場合があるのでお勧めしません。

《重症化した場合》

順調に登ってきたにも関わらず突然重度の症状が出る場合があります。特に食事の後は重症化しやすいので注意が必要です。体が食べた物を消化して血液を作る際に大量の酸素を必要とするため、標高が高く酸素が薄い八合目では酸素不足に陥りやすく、二日酔いのような重い頭痛や吐き気で行動不能になる場合があります。

このような症状が出た場合、2時間程度安静にして携帯酸素缶を使用しましょう

布団に横になり症状が軽くなるまでゆっくり酸素を吸入し、ある程度落ち着いてきたら酸素缶の使用をやめて、ゆっくり深呼吸をしながら高度順応に努めましょう。いつまでも酸素缶を吸入していては高度順応が出来ません。

弾丸登山で重症化した場合は直ぐに下山してください。

個人差はありますが、容量5Lの携帯酸素缶を2〜3本も吸えば症状が軽くなると思います。携帯酸素缶は山小屋で1本1,500円くらいで売っているので、持参していなくてもお金さえあれば購入できます。しかし、山小屋で購入するとかなり割高なのでザックに余裕があれば予めお守り程度に持っていくといいかもしれません。

  

山小屋での夕食後に重症化した場合、山頂での御来光は諦めることを強く勧めます。無茶をして症状を悪化させ辛い思いをするより、十分な睡眠を摂って山小屋の前で御来光を拝んだ後に万全の状態で山頂を目指した方が後悔のない充実した山行になるはずです。

 

高山病の予防策

しっかりと対策をすることで高山病はある程度防ぐことが出来ます。

1. 登山前に体調を整える

睡眠不足や風邪などの体調不良の場合、高山病になりやすいです。登山予定の一週間前から体調管理は徹底しましょう。

2. 登山に適した装備を揃える

適当な服装や靴での登山は身体に大きな負担がかかり、発汗による汗冷えや不安定な歩行によるペースの乱れで高山病だけでなく低体温症や怪我のリスクも高まります。必ず適切なウェア、自分の体に合ったザックや登山靴を着用しましょう。

3. できるだけ荷物は軽くする

富士山は急登が続き、荷物が重いと身体への負担が大きく息も上がりやすくなります。呼吸が乱れてくると酸欠状態に陥りやすく高山病になるリスクが一気に高まります。必要最低限の物だけ持っていきましょう。

4. 登山口で高度順応

標高2,000mの五合目登山口から登り始める人がほとんどだと思います。登山口に着いたら高度順応のため少なくとも1〜2時間はゆっくり休みましょう。

5. 深呼吸をしながら一定のペースでゆっくり歩く

無理に周りのペースに合わせたり、急いで歩くと呼吸が乱れて酸素を効率的に取り込めなくなり、高山病になりやすいです。周りのことは一切気にせず自分のペースでゆっくり歩きましょう。

頻繁に携帯酸素缶で酸素を吸入しながら登ると高度順応が出来ず、酸素が切れた途端に重症化する可能性が高く危険です。息苦しさを感じたらペースを落として深呼吸しながら休憩してください。

6. こまめに水分補給をする

脱水症状になると血流が悪くなり脳へ酸素が供給されなくなるので、高確率で高山病の症状が出ます。休憩のタイミングで水やスポーツドリンクを一気に飲んでも吸収率が悪くトイレが近くなるだけなので、経口補水液をハイドレーションなどに入れて歩きながら少しずつ飲むのが熱中症対策にもなり一番効果的です。アクエリアス経口補水液は味も良く、とても飲みやすいのでオススメです。

7. 体を冷やさない

行動中は寒さをあまり感じることはありませんが、休憩などで動きを止めると汗で濡れた衣服が体温を急激に奪っていきます。体が冷えると血流が悪くなって酸素が供給されにくくなり、高山病になりやすいです。夜間は夏場でも一桁まで気温が下がるので、体が冷え切る前に防寒着を着用しましょう。

また、ファイントラックのドライレイヤーは吸汗速乾性シャツやパンツの下に着用することで、汗冷えや汗のベタつき、汗の匂いを抑え、体温の低下を防ぐことが出来ます。登山には必須のアンダーウエアなので、上下で揃えておけば快適な登山を楽しめるのでオススメです。

【男性用】

【女性用】

8. 山小屋に到着してもすぐに寝ない

標高の高い七合目、八合目の山小屋で高度順応ができていない状態で寝てしまうと高山病になりやすいです。寝ている間は呼吸が浅く必要な酸素を取り込めなくなるので、到着したら夕食の時間まで荷物整理や景色を眺めてゆっくり過ごしましょう。

9. 夕食後は安静にする

食事を摂った後は酸素を多く消費します。食べる前は軽い症状でも、食べ終わってから突然重症化する場合もあるので、油断せずにゆっくり深呼吸をしながら1〜2時間は身体を休めましょう。あまり食欲がない場合は無理に食べずに水分を多めに摂ってください。

10. パルスオキシメーターを使用する

新型コロナウイルスの流行により使用したことのある人は多いと思いますが、パルスオキシメーターは現在自分の血液中に酸素が何%あるか知ることが可能です。所持していれば登山中に定期的に測定し、数値化することで高山病を発症する前に対策できるので、かなりオススメです。

平地で健康な状態であれば酸素飽和度は大体98%前後ですが、90%を下回ると高山病になりやすく、80%を下回った場合は重症化する可能性が非常に高いです。血中酸素濃度や症状の表れ方には個人差がありますが、90%を下回ったら休憩をとって90%以上になるまで深呼吸をしましょう。

失敗談

以前友人と富士山に登った際、八合目の山小屋で夕食を食べた後に突然重症化し、重度の頭痛と吐き気でダウンしたことがあります。私は一年を通して頻繁に重装備で登山をしているので慢心していたんでしょう。富士山登山の数日後に長期の北アルプステント泊縦走を控えていたので、高度順応とトレーニングも兼ねて20kgの装備で登りました。休まずハイペースで登る友人に遅れまいと、重い荷物を背負った状態で自分のペースを崩し無茶をした結果、高度順応が間に合わず夕食を食べたあと一気に重症化という結末を迎えました。先述した方法で重度の高山病を克服し、ぐっすり眠って翌日は信じられないくらい調子が良かったですが、高山病にならないことに越したことはないので、変な真似はせず普通に登りましょう。

最後に

高山病は誰にでも発症する可能性があります。一度何事もなく登れたからといって二度目も大丈夫とは限りません。弾丸登山や無茶な計画はやめて、油断せずにしっかりと高山病対策をとって富士山登山を楽しみましょう。

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佐藤 徹

1986年岩手生まれの岩手在住。 東北の山々や自然風景、鉄道情景を撮影しているフォトグラファー。 日本山岳写真協会会員

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